ガバナンスに関する開示


コーポレートガバナンス・コードを受けてガバナンス部分の開示がどのように変わるべきかについて考えます。最近の日本企業の開示の重要なトレンドの1つに、コーポレートガバナンスに関する情報の増大が挙げられます。その背景としては、「コーポレートガバナンス・コード」の導入による投資家の関心の高まりや海外投資家の影響による海外企業との比較感、日本企業の稼ぐ力の強化を目的にコーポレートガバナンスの重要性を強調する政策の影響などが挙げられます。

また今回、とくに重要な事は、コーポレートガバナンス・コードにおいて、 『コーポレートガバナンス』とは、会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を 行うための仕組みを意味すると明確に定義づけられた所にあります。つまり、それぞれの会社におけるカバナンスは、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のための自律的な対応が図られることを通じて、会社、投資家、ひいては経済全体の発展にも寄与するものであるという事が説明できるものである事が求められています。

現在起こっている、定量的な変化を見てみると次の様の事が言えます。これまでのアニュアルレポートやウェブサイトのコーポレートガバナンスのセクションは簡潔かつ形式的に記載されていました。2010 年ごろの記載は、2 ページ程度の長さに留まるのが一般的でした。しかし、 2015 年においては、コーポレートガバナンス体制の説明に 10 ページ近い分量を割く企業も見られるようになっています。このように、日本ではコーポレートガバナンス体制の枠組みをより詳細に説明しようとする傾向が出て来ています。これは欧米の企業では当然であり、それに近づいてきているともいえるでしょう。

また、2010 年頃のコーポレートガバナンスのセクションでは、基本的な事項のみ記載することが一般的でした。記載される主な内容は企業のガバナンスへの考え方(経営の監督と業務執行の分離など)やガバナンス体制(取締役会や執行役員会、ガバナンス委員会など)、アドバイザリーコミッティーの活動状況などとなっていました。 しかし、最近では、ガバナンスの枠組みにおけるそれぞれの役割などについてより詳細な説明がなされるようになってきています。さらに、コーポレートガバナンス体制(監査役やガバナンス委員会設置による取組みなど)の説明や、写真・経歴の掲載などを通じたより詳細な取締役の紹介、取締役会への出席状況、役員報酬、社外取締役(独立取締役)の選任理由、社外取締役や独立取締役の目から見たガバナンスやそれに対する自らの貢献、改善に向けた提言などを盛り込んだインタビュー記事も掲載されるようになってきています。

また、アニュアルレポートを見ていると多くの企業が社外取締役のインタビューに取り組んでいます。コーポレートガバナンス・コードが導入されるまでは、社外取締役や独立取締役の選任に対して形式的には実施していても潜在的な抵抗があったように感じます。その背景には、企業経営はその企業内での経験がなければ無理で、社外の人間は企業経営に貢献できないばかりか、迅速な意思決定の障害にさえなり得るという強い懸念があったからではないでしょうか。しかし、「監督と執行の分離」を意識した改革が不可避となってくる中、開示資料における独立取締役のインタビューを見ても、単にお飾りではなくしっかりとした役割を認識し果たしてもらおうとする姿勢が明確に現れてきました。

社外取締役のインタビューを見ているとまだ、取組みが始まったばかりであるという印象を受けますが、今後必要とされるのは、彼ら自身の役割を認識しているという説明だけではなく、実際に監督機能を果たしており、会社が将来に向かって成長している事を確認している事を明確に示していく事だと思われます。そして、その様ことが実際に出来ているという事をガバナンスの開示において示していく事が今後求められてくると考えられます。

コーポレートガバナンスの説明は、その目的が持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のための自律的な対応が図られることを通じて、会社、投資家、ひいては経済全体の発展にも寄与するものであるという事を明確に意識する事が必要です。その上で、それに資する体制となっている事、その様な観点で社外取締役の果たすべき役割を考えて仕組みを整えている事、実際に社外取締役が役割を果たしている証左を見せる事が必要といえるでしょう。




 

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