レバレッジETFを理解する


レバレッジ型のETFが人気です。日経平均レバレッジ型のファンドなどは毎日売買代金の上位に登場する様になっています。しかし、個人投資家の方々とお話をしていると、その仕組みをよくご存じないために誤解をしている事があります。ここで少し商品の仕組みを解説しておきたいと思います。

例えば、日経平均レバレッジ型の上場投信は、日々の騰落率が日経平均株価の騰落率の2倍として計算された、日経平均レバレッジ・インデックスを対象指数とし、この対象指数に連動することを目指して運用されるファンドです。

つまり、日経平均レバレッジ・インデックスは、日経平均株価が5%上がれば10%上がり、日経平均株価が5%下がれば10%下がる動きをするよう計算されています。これに連動する日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信も、日々の値動きが日経平均株価の2倍になります。このようなETFはレバレッジ型ETFと呼ばれ、株価が上昇する見通しを立てた場合には有効な投資対象となります。また、日経平均株価などの指標とは逆の値動きを目指して運用されるファンドもあります。例えば、ダブルベアと呼ばれるファンドは日経平均株価が5%上がったら10%下がり、日経平均株価が5%下がったら10%上がる動きをするよう計算されており、株価が下落する見通しを立てた場合には有効な投資対象となります。もちろん、株式市場が下落する見通しを立てた場合には、指数に連動するETFを信用売りすることや、指数先物を売ることが考えられます。しかし、信用売りや先物売りには別口座が必要であり、証拠金を差し出すことが求められるなど、手間がかかります。ダブルベアなどインバース型のETFであれば、ETFを買うだけでヘッジ効果が得られるため、個人の方々からすると活用しやすいのだと考えられます。

しかし、ここで注意をしなければならないのは、2倍の動きになるのはあくまでも翌日だけであり、それ以降の動きは必ずしも指数の2倍になるとは限らないということです。これは、商品の設計上、指数が上昇した日には、その翌日の指数の2倍の動きをするために買い増しを指数先物の買い増しをする必要が生じ、逆に指数が下落した場合には指数先物を売却する必要が生じるためです。このことから、指数が一方的に上昇下落した際には想定した以上の効果が出ます。一方、上昇下落を繰り返した場合には、結果として高値で買い安値で売ることを繰り返すことになり、想定以下の成果となってしまいます。

少し極端なケースを考えて見てみましょう。

運用開始時の基準価格を100、指数も100とします。その時の先物ポジションはダブルブルの場合、200となります。翌日指数が15%上昇すると、指数は115、先物の評価額は200×1.15ですから230となります。ここでの収益は230ー200=30ですから基準価格は100+30=130となります。指数の倍の30%の利益を得ることができました。さてこの時基準価格は130ですから先物のポジションは130×2=260となる必要があります。そのため、先物は260ー230=30を新たに買い建てる事が必要です。翌日指数が再び、100にまで下落したとします。その場合、先物の評価額は260×100÷115=226.1となります。この1日の損失は226.1-260=▲33.9となります。したがって基準価格は130-33.9=96.1となりました。運用開始から見ると指数は横ばいであるのにファンドは▲3.9%とマイナスのリターンになってしまっているのです。その時必要な先物ポジションは96.1×2=192.2ですから、192.2ー226.1=▲33.9を売り建てることが必要となります。この様に上がれば買い、下がれば売るという売買をくりかえる結果、相場がもみ合いとなった場合、ファンドのリターンは2倍のリターンを下回る結果となってしまいます。下記の例は+15%して翌日には元に戻りまた+15%して元に戻るという極端なケースですが、これで見ると7日後には指数が15%上昇の時にファンドは2倍のリターンではなく同じく15%のリターンとなっており、10日後には指数は横ばいであるにも関わらず、ファンドの基準価格は▲18.1%と大きなマイナスになっています。

もちろん、トレンドを持って上昇した時にはどんどん買い増しをしていく事がプラスにつながります。毎日2ずつ指数が上昇するケースでは、10日後の指数のリターンは20%ですが、ファンドの基準価格は43.5%のプラスと2倍以上のリターンとなりました。一方下落するケースでは基準価格の下落に伴って調整すべき金額が徐々に小さくなるために、指数が▲20%と下落する際に、基準価格は▲36.3%と2倍以下になっています。

レバレッジETFを理解する1

この様に、レバレッジ型ETFは長期で見ると必ずしも指数の2倍となる動きをしないという事を理解して投資を行うことが必要です。通常、指数は一方的に上昇することは稀であり、上下動を繰り返しながら上昇または下落して行きます。相場が揉み合い局面に入ると基本的には目減りするという特性を踏まえると、レバレッジ型ETFは長期保有の対象というよりは、ここぞという時に短期で利用するのが良いと考えられます。

<横ばい相場での基準価格の推移>

レバレッジETFを理解する2

投資翌日がマイナスからスタートすると更にパフォーマンスは悪化する

レバレッジETFを理解する3

ここまで極端な変動はないので影響はここまで大きくならないが、長期保有すると徐々にその影響は大きくなる。

指数が98〜102への動きを繰り返した場合

レバレッジETFを理解する4

影響は出ているが、10日後で見ると▲0.4%と影響はさほど大きくありません。しかし、これも1年間(250営業日)続くと、影響は▲9.6%と無視できない大きさになります。

レバレッジETFを理解する5



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