日銀がマイナス金利を導入し、資本市場の動きが激しくなっています。資本市場の動きが理論通りであるかないかの判断は、様々な前提条件によって変わる部分もあります。ここでは、伝統的な投資対象資産の考え方を整理した上で、マイナス金利によってアセットアロケーションの考え方をどの様に変える必要があるのかを考えます。
まずは、伝統的資産(国内債券・国内株式・外国債券・外国株式)の基本特性と役割を復習しておきましょう。
国内債券
- インカムゲインとキャピタルゲインがある事で金利上昇時にもトータルリターンはプラスになる可能性高くなります。特に、満期保有の場合には金利がプラスであり、デフォルトがない限りプラスのリターンが確保できます。
- 株式の配当と異なりインカムゲインは確定しており、毎年のキャッシュフローは投資時点で確定します。
- 他の資産との相関が低く、他の資産が下落する局面ではヘッジ効果が期待できます。
- 生命保険などの運用を行う場合には負債とのデュレーションを合わせることで、リスクを抑える効果があります。
国内株式
- 予定利率達成に向けて積極的に運用収益を追求する資産と位置付けられます。
- リターンは配当(インカムゲイン)と値上がり益(キャピタルゲイン)から得られます。
- 経済変動の影響を強く受け、短期で見た場合の損益は比較的大きい資産です。
- 長期的なインフレヘッジ効果があると言われています。
外国債券
- 国際分散投資により国内債券への投資に比べ低リスクで同等のリターンが得られる可能性があります。ただし、為替変動リスクには注意を要します。
- 資源価格や輸入製品の価格を考えると、コストプッシュ型インフレへのヘッジ効果があると考えられます。
外国株式
- 日本企業だけでは得られない収益機会の拡大が期待できます。特に成長が早い新興国やガバナンスの良い優良企業が多数存在する欧米企業への投資は日本企業への投資では得られないリターンが期待できる場合があります。
- 様々な成長ドライバーをポートフォリオに組み込むことで、特定の国のみに投資した場合には得られない国際分散投資によるリスク低減効果が期待できます。
- 国際的な株式への投資でインフレリスクのヘッジ効果が期待できます。購買力平価を前提とすると投資時点で満期までのリターンが確定する外国債券より適している可能性もあります。
基本的に伝統的な資産への投資では上記の様な資産特性を踏まえた投資が行われてきました。今回のマイナス金利導入で最もその位置づけを変えなければならないのは、国内債券への投資の考え方です。
マイナス金利導入により、国内債券の特性で最初に述べたのは内容が、揺らぐことになります。
まず、インカムゲインとキャピタルゲインがある事で金利上昇時にもトータルリターンはプラスになる可能性高いという点についてです。短期的にはマイナス金利の幅が広がりキャピタルゲインが得られる可能性はあります。しかしながら、金利が上昇した場合、価格変動の大きさに比べて、インカムゲインが小さいためトータルリターンがマイナスとなる可能性が高まります。特に、満期保有の場合には金利がマイナスであるため、プラスのリターンが確保できる可能性はありません。
つまり、10年債利回りがマイナスとなった現在、10年未満の債券は短期的な投機の対象であっても、長期の投資対象として位置づけることは難しくなったと言えるでしょう。もちろん、一時的な退避先としてしての位置づけは今後も続くと考えられます。ただ、預金金利がマイナスになっていない以上、債券よりは現金の方が合理的かもしれません。個人の場合には変動金利型個人国債という選択肢も残されています。また、安定的にインカムゲインの確保はテーマとなると考えられます。業績の安定している高配当株やREITなどは今後も注目される可能性が高いと言えるでしょう。
期待リターンをベースとした場合、債券の比率は低下が予想されます。また、リスクベースで考えた場合、現金の価値が高まると共に、プラスのリターンが確保出来、株式などと異なるリスク特性が期待できるオルタナティブが投資対象としてより重要になるのではないでしょうか。
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